銀行融資が通らない経営者が直面する現実
事業の成長や資金繰りの安定化のために銀行融資を申し込んだものの、審査に通らなかった――。このような経験をされた中小企業の経営者や経理責任者の方は少なくありません。
銀行融資は他の資金調達方法と比較して金利が低く、融資限度額も大きいという大きなメリットがある一方で、審査基準が厳格であり、時間もかかるという特徴があります。特に中小企業にとっては、大企業と比べて信用力の面で不利になりやすく、審査通過のハードルは決して低くありません。
しかし、審査に通らなかった理由を正しく理解し、適切な対策を講じることで、次回の融資申請では承認される可能性を高めることができます。また、銀行融資だけが資金調達の選択肢ではないという視点も重要です。
本記事では、銀行融資の審査で見られているポイントを詳しく分解し、「なぜ審査に通らないのか」「どのように改善すべきか」を実務的な視点から解説します。さらに、銀行融資が難しい場合に検討すべき代替的な資金調達手段についてもご紹介します。
【編集部コメント】
銀行融資の審査に落ちることは、経営者にとって大きなストレスとなります。しかし、審査落ちの理由を冷静に分析し、改善策を実行することで、資金調達の成功率は確実に向上します。本記事で紹介する対策を一つひとつ確認していきましょう。
銀行融資の審査基準とは?金融機関が重視する9つのポイント
銀行融資の審査基準は明確に公開されていませんが、事業内容、返済能力、財務状況、経営者の信用力など、多角的な視点から総合的に判断されます。審査では提出された書類をもとに、融資担当者、融資担当課長、副支店長、支店長と複数段階でチェックが行われ、最終的には本部の融資部でも複数名が確認します。
銀行が審査で特に注意深く確認するのは以下の書類です。
| 書類名 | 確認される内容 |
|---|---|
| 決算書(法人) | 一定期間の経営成績や財務状態を確認 |
| 確定申告書(個人事業主) | 1年間の所得状況を確認 |
| 事業計画書 | 事業の目的、必要資金、調達方法、事業の見通しを確認 |
| 資金繰り表 | 一定期間の資金の収入と支出を確認 |
| 見積書 | 設備や備品購入に必要な費用を確認 |
銀行融資の審査に通らない9つの主な理由
銀行融資の審査に通らない場合、返済能力が低く貸し倒れリスクが高いと判断されている状態です。具体的には、以下の9つの理由が審査落ちの主な原因となります。
①金融事故歴がある
銀行は個人信用情報機関に加盟しており、審査時には必ず信用情報を照会します。過去に借金返済の滞納や債務整理などの金融事故歴が記録されている場合、信頼を著しく損ねているため、審査通過はほぼ不可能です。
金融事故の情報は一定期間(通常5~10年)信用情報機関に記録されるため、その期間は銀行融資を受けることが極めて困難になります。
②決算書が赤字である
決算書が赤字の場合、基本的に銀行融資の審査通過は難しくなります。ただし、以下のような一時的・特殊な事情がある場合は例外的に融資を受けられる可能性があります。
- 創業時の初期投資がかさんでおり、まだ実績が出ていない段階
- 投資分を回収できていないが、将来的な収益見込みが明確
- 災害や社会的要因など、一過性の外部要因による赤字
しかし、単に売上が上がらず赤字経営が続いている場合は、事業モデルそのものに問題があると判断され、審査通過は困難です。
③債務超過である
債務超過とは、負債総額が資産総額を超えている財務状況を指します。つまり、現在所有するすべての資産を換金しても、借金返済や固定費支払いの合計額に足りていない危険な状態です。
債務超過の状態では、すぐに倒産するとは言えないものの、純資産が減少し続ける非常にリスクの高い経営状態であるため、銀行は融資を避ける傾向にあります。
④消費者金融から借入れがある
消費者金融からの借入れがある場合、高金利による利息負担が資金繰りに悪影響を及ぼすと判断されます。また、ノンバンクから借入れをしている事実自体が、銀行からの融資を受けられない信用力に問題がある企業である可能性を示唆します。
消費者金融からの借入残債がある場合、返済能力や負債状況についてより慎重に評価され、審査通過率は大幅に低下します。
⑤差し入れる担保がない
銀行にとって、担保や保証人は万一のリスクヘッジとして非常に重要です。特に中小企業の場合、資金体力が大企業と比較して不十分と判断されやすいため、不動産などの担保提供を求められるケースが一般的です。
担保として差し入れることができる不動産などの資産がない場合、審査通過の可能性は大きく低下します。
⑥自己資金に不安要素がある
自己資金とは、借入れではなく自由に動かすことができる自己所有の資金を指します。開業資金などの融資を受ける場合、着実に開業準備を進めてきた証拠として、十分な自己資金を用意しておくことが重要です。
以下のような場合、自己資金として認められず、審査に悪影響を及ぼします。
- 自己資金の金額が少額すぎる
- 一時的にどこかから借りて所有しているように見せる「見せ金」
- 急激に口座残高が増加しており、資金源が不明確
⑦税金・公共料金を滞納している
税金や社会保険料、公共料金の滞納は、返済能力の欠如を示す明確なシグナルです。税金の納税状況は納税証明書から確認でき、社会保険料は決算書の預り金の金額から支払い状況を推測できます。
公共料金についても、年度内の支払い状況から滞納の有無を確認される場合があります。これらの基本的な支払いを滞納している企業に対して、銀行が融資を実行することはほぼありません。
⑧資金の使途と必要額が合っていない
融資申請時に示した資金使途と見積もり額が整合していない場合、事業以外の目的に資金を使用する可能性があると疑われます。
たとえば、設備投資のために1,000万円の融資を申し込んでいるのに、見積書では500万円しか必要ないことが判明すれば、残りの500万円の使途が不明瞭となり、審査で問題視されます。
⑨返済原資を捻出する見込みがない
決算書や事業計画書から返済原資を捻出できる見込みがないと判断されると、審査には通りません。借りた資金を返済するための原資が確保できなければ、返済が滞ったり貸し倒れになったりするリスクが高いためです。
銀行は営利企業であり、融資した資金を確実に回収することが大前提です。そのため、返済計画に具体性がなく、収益見込みが不透明な場合は、融資を実行しません。
【編集部コメント】
審査に通らない理由は複合的であることが多く、一つの要因だけでなく複数の問題が重なっている場合もあります。まずは自社の状況を客観的に分析し、どの要因が審査落ちの原因となっているかを特定することが重要です。
銀行融資の審査に通過するための7つの対策
銀行融資の審査に通らなかった場合でも、適切な対策を講じることで、次回の融資申請では承認される可能性を高めることができます。以下、実務的に効果的な7つの対策をご紹介します。
対策①信用格付けを向上させる
信用格付けとは、銀行が行う信用力や返済能力の評価をランク付けしたものです。決算書の財務分析結果と、経営者の姿勢や経営方針の評価によって決定されます。
信用格付けを向上させるためには、以下の取り組みが有効です。
- 決算書の内容を改善し、黒字経営を継続する
- 自己資本比率を高め、財務基盤を強化する
- 売上高や営業利益を安定的に成長させる
- 経営者としての明確なビジョンと戦略を示す
対策②資金使途を明確に示す
借入れした資金を何のために使うのか、具体的かつ明確に説明することが重要です。特に、収益や生産性を高めることを目的とする前向きな投資であれば、審査通過率は高まります。
資金使途を説明する際は、以下の点を明確にしましょう。
- 具体的な設備投資や商品仕入れの内容
- 見積書など、金額の根拠となる書類の提示
- 投資によって期待される収益改善効果
- タイムラインと実行計画
対策③事業計画・返済計画を適切に立案する
具体的な裏付けのある事業計画書と返済計画書を作成することで、銀行からの信頼性が大幅に向上します。
事業計画書には、以下の内容を盛り込みましょう。
- 市場分析と競合状況の把握
- 具体的な売上目標と達成のための施策
- コスト構造と利益率の改善計画
- リスク要因とその対策
返済計画については、月次のキャッシュフローを詳細に示し、無理のない返済スケジュールを提示することが重要です。
対策④消費者金融の借入れを完済する
消費者金融からの借入残債がある場合、銀行融資の審査通過率は大幅に低下します。可能であれば、銀行融資を申し込む前に消費者金融の借金を完済しておくことを強く推奨します。
完済が難しい場合でも、残債を可能な限り減らしておくことで、審査における印象を改善できます。
対策⑤税金・公共料金は必ず期限内に支払う
税金や社会保険料、公共料金の支払いは、企業の基本的な信用力を示す重要な指標です。特に税金は法的な納税義務があるため、滞納していると審査で致命的なマイナス評価となります。
過去に滞納がある場合は、すぐに納付し、今後は期限内に確実に支払う体制を構築しましょう。
対策⑥担保を用意する
中小企業が銀行融資を受ける場合、不動産などの担保を提供することで審査通過率が向上します。また、代表者が連帯保証人になる人的保証も一般的に求められます。
担保として利用できる資産には、以下のようなものがあります。
- 不動産(土地・建物)
- 売掛債権
- 棚卸資産(在庫)
- 機械設備
- 有価証券
対策⑦銀行融資以外の資金調達方法を検討する
銀行融資の審査に通らない場合、他の資金調達手段を検討することも重要な選択肢です。資金調達の方法は銀行融資だけではありません。
銀行融資以外の主な資金調達方法を以下の表にまとめました。
| 資金調達方法 | 特徴 | メリット |
|---|---|---|
| 政府系金融機関の融資 | 日本政策金融公庫などからの融資 | 民間銀行より審査が柔軟、創業支援に強い |
| ファクタリング | 売掛債権を売却して現金化 | 審査が柔軟、入金までが迅速(最短即日) |
| ビジネスローン | 事業者向けの無担保ローン | 担保・保証人不要、審査が比較的緩い |
| 売掛債権担保融資(ABL) | 売掛債権を担保とした融資 | 不動産担保がなくても利用可能 |
| 補助金・助成金 | 国や自治体からの給付金 | 返済不要、経営改善に活用できる |
【編集部コメント】
特にファクタリングは、売掛債権さえあれば利用できるため、銀行融資の審査に通らない企業でも資金調達が可能です。信用力に不安がある場合や、急ぎで資金が必要な場合には、非常に有効な選択肢となります。
銀行融資の種類と特徴を理解する
銀行融資と一口に言っても、実は複数の種類があり、それぞれ審査基準や特徴が異なります。自社の状況に最適な融資形態を選択することで、審査通過率を高めることができます。
プロパー融資
プロパー融資とは、銀行が独自の責任で実行する融資です。保証なしで銀行が貸し倒れリスクを全面的に引き受けるため、信用力の高い企業でなければ利用できません。
審査のハードルは最も高いものの、承認されれば企業としての信用力が非常に高いことを意味し、今後の銀行取引でも有利になります。
信用保証付き融資
信用保証協会が保証する融資で、万一返済が滞った場合は信用保証協会が立て替えて支払います。銀行の貸し倒れリスクが軽減されるため、プロパー融資より審査に通りやすい特徴があります。
中小企業の多くが利用している融資形態であり、実績が少ない企業でも比較的利用しやすいメリットがあります。
不動産担保融資
所有する不動産を担保として提供する融資です。不動産の価値は比較的安定しているため、信用力に不安がある場合でも借入れできる可能性が高くなります。
ただし、返済不能となった場合は担保とした不動産を失うリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
売掛債権担保融資(ABL)
売掛債権を担保として提供する融資で、Asset Based Lending(ABL)とも呼ばれます。不動産などの固定資産を持たない企業でも、安定した売掛債権があれば利用できる可能性があります。
ただし、売掛債権の回収状況や取引先の信用力によって、融資可能額が変動する点に注意が必要です。
ビジネスローン
通常の銀行融資が難しい事業者向けのローン商品です。審査のハードルは低い分、金利が高めに設定され、融資上限額も少なくなる傾向があります。
担保や保証人なしでも借入れできるため、信用力の低い個人事業主や中小企業でも利用しやすいという利点があります。
ファクタリングという選択肢:売掛債権の活用法
銀行融資の審査に通らない場合、ファクタリングは非常に有効な代替手段となります。ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、入金期日前に現金化する資金調達方法です。
ファクタリングの主なメリット
ファクタリングには、銀行融資にはない以下のような独自のメリットがあります。
- 審査基準が柔軟: 自社の信用力ではなく、売掛先の信用力が主な審査対象となる
- 入金が迅速: 最短即日~数日で資金調達が可能
- 負債にならない: 売掛債権の売却であり、借入れではないため貸借対照表に負債として計上されない
- 担保・保証人不要: 売掛債権が対象となるため、不動産担保や保証人が不要
- 金融事故歴の影響が少ない: 過去に債務整理などがあっても利用できる可能性が高い
ファクタリングが特に有効なケース
ファクタリングは、以下のような状況で特に効果を発揮します。
- 銀行融資の審査に通らなかった企業
- 急ぎで資金が必要な場合(数日以内など)
- 売掛金の入金サイトが長く、資金繰りに困っている
- 取引先からの入金を待っている間に支払期日が迫っている
- 創業間もなく実績が少ない企業
- 決算が赤字だが、取引先は優良企業である
【編集部コメント】
ファクタリングは、売掛債権という「将来入金される予定の資金」を前倒しで受け取る仕組みです。銀行融資のように長期間の審査を待つ必要がなく、急な資金需要にも対応できる柔軟性が大きな魅力です。ただし、手数料が発生するため、コストとメリットを比較して判断することが重要です。
まとめ:審査落ちを次の成功につなげるために
銀行融資の審査に通らないという経験は、経営者にとって大きなストレスとなりますが、審査落ちの理由を正しく理解し、適切な対策を講じることで、次回の融資申請では成功する可能性を高めることができます。
本記事で解説した9つの審査落ちの理由を振り返り、自社がどの要因に該当するかを客観的に分析しましょう。そして、7つの対策のうち実行可能なものから順次取り組んでいくことが重要です。
特に以下のポイントは、すぐに着手できる重要な改善項目です。
- 税金・公共料金の滞納があれば即座に解消する
- 消費者金融からの借入れがあれば優先的に返済する
- 決算書の内容を改善し、黒字経営を目指す
- 具体的な根拠のある事業計画書・返済計画書を作成する
- 資金使途を明確にし、見積書などの裏付け資料を準備する
また、銀行融資だけが資金調達の選択肢ではありません。ファクタリング、政府系金融機関の融資、ビジネスローンなど、自社の状況に合った資金調達方法を柔軟に検討することが、資金繰りの安定化と事業成長につながります。
特にファクタリングは、銀行融資の審査に通らない企業でも利用できる可能性が高く、売掛債権という「隠れた資産」を活用することで、迅速に資金を調達できる有効な手段です。
資金調達は企業経営の生命線です。一度の審査落ちで諦めるのではなく、原因を分析し、改善策を実行し、最適な資金調達方法を選択することで、事業の安定的な成長を実現しましょう。





