中小企業こそインデックスファンドで資産運用を始めるべき理由
中小企業の経営において、本業の利益を安定的に確保することは最も重要な課題です。しかし、せっかく積み上げた内部留保を銀行口座に置いたままにしていませんか。財務基盤が比較的安定し、高い利益を上げている一部の企業では、退職金積立などを目的に金融機関に運用を委託するケースも見られますが、多くの中小企業では余剰資金を活用しきれていないのが現状です。
また、過去のバブル期に痛い経験をした経営者の中には、価格変動のある有価証券運用に抵抗感を持つ方もいるでしょう。確かに、本業に影響を及ぼすような高リスクな投資は推奨できません。不確実性の高い金融商品に会社の貴重な資金を投じることは、本業で積み上げてきた利益を瞬く間に失い、経営の根幹を揺るがしかねないからです。
しかし、もし専門知識がなくても、少ない資金でも、市場の成長を捉えながらリスクを抑えた運用ができる投資先があれば、資産運用も検討の対象となるのではないでしょうか。そこでおすすめなのが、インデックスファンドです。
インデックスファンドとは、特定の株価指数(例:日経平均株価やTOPIX、S&P500など)に連動するように設計された投資信託です。この記事では、手元の資金が少なくても、リスクを抑えながら資産を増やすことを目指せる、インデックスファンドに焦点を当てて解説します。ぜひ、貴社の資産運用戦略を検討する上での参考にしてください。
中小企業が高リスク投資を避けるべき本質的な理由
投資は本業を支える手段であり、目的ではない
投資の世界には、「人の行く 裏に道あり 花の山」という格言が存在します。これは、他人とは逆を行くことで利益を得るという教えであり、多くの投資家が注目する銘柄ではなく、まだ見過ごされている割安な株に投資することこそが、大きな果実をもたらすという考え方です。
しかし、中小企業において、本業に影響を及ぼすような高リスクな投資は、決して推奨できるものではありません。なぜなら、法人における資産運用で最も大切なのは、本業の状況、将来の事業計画、そしてどれくらいの余剰資金があるのかを把握し、資産運用でどのくらいのリスクなら許容できるのかを慎重に判断することだからです。
もし投資で大きな損失を出してしまった場合、その穴埋めには本業で得た利益が充てられることになります。これは、納税資金の確保にも影響が出る可能性があり、最悪の場合、事業継続そのものが危うくなる事態も考えられます。投資はあくまで事業成長を支える手段であり、それ自体が目的化してはならないのです。
専門知識と体制の不足という現実的な課題
中小企業の経営者や財務担当者は、投資の専門家ではないことが多く、高度な金融知識を持ち合わせていないケースがほとんどです。そのような状況で、複雑な市場分析やリスク管理を行うことは非常に困難といえるでしょう。
個別株投資の場合、投資家は数多くの企業の中から将来有望な銘柄を選び出し、その企業の財務状況や業界の動向、競合他社の状況などを分析し、適切な売買のタイミングを見計らう必要があります。これには、専門的な知識や多くの時間、そして精神的な負担が伴います。
さらに、中小企業では資産運用の専門部署を設けることも難しく、経営者自身や限られた財務担当者が片手間で対応せざるを得ないのが実情です。このような環境下で高リスクな投資を行うことは、本業に集中すべき貴重なリソースを奪い、かえって企業価値を毀損するリスクがあります。
インデックスファンドが中小企業に適している3つのメリット
メリット1:分散投資によるリスク低減効果
インデックスファンドの最大のメリットは、指数を構成する銘柄に分散投資を行うことで、個別の企業の業績悪化によるファンドへの影響が分散され、リスクを低減する効果が期待できる点にあります。
投資の世界では「すべての卵を一つのかごに盛るな」という格言がよく使われます。複数の卵がある場合は複数の籠に分けておけば、もしそのうちの一つの籠を落として卵が割れてしまっても、他のかごの卵を割らずに残すことができるという考え方です。
| 投資方法 | リスクの特徴 | 影響範囲 |
|---|---|---|
| 単一の株式に投資 | 特定のA社の株だけを購入した場合、A社の業績悪化や予期せぬ問題が発生すると、株価が大きく下落して資産が大きく減少する可能性があります | リスクが一点に集中 |
| インデックスファンド | 資金は多くの企業に分散投資されるため、仮に構成銘柄の中の一つのB社の業績が悪化しても、ファンド全体に与える影響は限定的 | リスクが分散される |
もちろん、インデックスファンドも市場全体の価格変動リスクからは免れられません。しかし、個別企業の倒産や業績悪化といった個別のリスクをある程度低減できる点は、専門知識や体制が不足しがちな中小企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
メリット2:運用コストが比較的低い
インデックスファンドは、アクティブファンドのように運用担当者が独自の調査・分析で銘柄を選定する必要がないため、運用にかかるコスト(信託報酬など)が比較的低く抑えられています。
アクティブファンドでは、ファンドマネージャーが市場平均を上回るリターンを目指して積極的に銘柄を選定し、売買を行います。そのため、調査費用や人件費、売買手数料などがかさみ、信託報酬が高くなる傾向があります。一方、インデックスファンドは市場の指数に連動することを目指すため、機械的に銘柄を組み入れるだけで済み、運用コストを大幅に削減できます。
長期的な資産形成を考える場合、このコストの差は決して小さくありません。例えば、信託報酬が年率0.2%のインデックスファンドと年率1.5%のアクティブファンドを比較すると、30年間の運用では最終的なリターンに大きな差が生まれる可能性があります。中小企業にとって、無駄なコストを抑えながら効率的に資産を増やすことは重要な経営判断といえるでしょう。
メリット3:管理の負担が軽く本業に集中できる
インデックスファンドは短期的な高リターンは期待できないものの、ファンドの運用を自分で行うものではないため、株式等に投資する場合と比べて、資産運用に係る管理の負担が軽いといえます。
個別株投資では、常に市場の動向を監視し、企業の決算情報をチェックし、売買のタイミングを判断する必要があります。これには相当な時間と労力がかかり、本業に支障をきたす可能性もあります。一方、インデックスファンドは市場の指数に連動するように自動的に運用されるため、日々の細かな管理はほとんど不要です。
その分、経営者や財務担当者は本業に関わる業務に集中することができます。中小企業にとって、限られた人的リソースを最も効果的に配分することは経営の生命線です。長期的な資産形成においては、インデックスファンドは低コストで、手間がかからず、リスク分散効果が期待できる合理的な選択肢といえるでしょう。
知っておくべきインデックスファンドのデメリットと対策
デメリット1:市場平均以上のリターンは期待できない
インデックスファンドは、基準価額がベンチマークとする指数等に連動して同じ動きで推移するため、市場平均であるベンチマークを大きく上回るリターンは期待できません。
これは、インデックスファンドの設計思想そのものに起因します。市場の平均的なリターンを確実に獲得することを目指す商品であるため、いわゆる「テンバガー(10倍株)」のような爆発的なリターンを得ることはできません。短期間で大きな利益を狙いたい投資家には向いていないといえるでしょう。
ただし、長期的な視点で見ると、市場平均のリターンを着実に積み上げることは、多くのアクティブファンドのパフォーマンスを上回る結果につながることが統計的に示されています。中小企業の資産運用においては、一攫千金を狙うよりも、着実に資産を増やしていく方が本業の安定にも寄与します。
デメリット2:価格変動リスクは存在する
インデックスファンドも含め、投資信託は一般的に分散投資により特定の銘柄の下落リスクを軽減する効果が見込める商品ですが、市場全体が大きく下落する局面では、インデックスファンドも基準価額が大きく下落することになります。
2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのような市場全体が暴落する局面では、どんなに分散投資をしていても損失を避けることはできません。これは、インデックスファンドが市場全体の動きに連動する設計になっているためです。
このリスクに対する対策としては、以下のような方法が考えられます。
- 長期投資を前提とし、短期的な価格変動に一喜一憂しない
- 事業継続に必要な資金は必ず確保し、余剰資金のみで運用する
- 株式だけでなく、債券など異なる資産クラスにも分散投資する
- 積立投資により購入時期を分散し、平均購入単価を平準化する
デメリット3:運用コストは必ず発生する
インデックスファンドの運用には、信託報酬などの運用管理費用が発生します。これらのコストは、投資信託の純資産総額から日々差し引かれるため、長期的に見るとリターンをわずかに押し下げる要因となります。
ただし、前述のとおり、インデックスファンドの信託報酬はアクティブファンドと比較すると格段に低く設定されています。近年では、年率0.1%台の超低コストインデックスファンドも登場しており、コスト面での負担は以前と比べて大幅に軽減されています。
重要なのは、コストとリターンのバランスを冷静に判断することです。少しでもコストを削減したいという気持ちは理解できますが、あまりにコストにこだわりすぎて、運用実績の乏しいファンドを選んでしまうのは本末転倒です。信頼できる運用会社が提供する、実績のあるインデックスファンドを選ぶことが大切です。
中小企業がインデックスファンドを活用するための具体的な4ステップ
STEP1:投資の目的と目標を明確に設定する
まずは、何のために、どれくらいの期間で、どの程度の収益を目指すのか、具体的な目標を設定します。例えば、「5年後の事業拡大資金の一部として500万円」「10年後の役員退職金準備として3,000万円」など、明確な目的を持つことが重要です。
目的が明確になると、自ずとリスク許容度や投資期間、適切な資産配分が見えてきます。漠然と「資産を増やしたい」と考えるよりも、具体的なゴールを設定することで、途中で方針がブレることなく、一貫した運用を続けることができます。
STEP2:リスク許容度を慎重に確認する
企業の財務状況や将来のキャッシュフローなどを考慮し、どれくらいのリスクを取ることができるのかを把握します。一般的には、短期的な資金の用途がない余裕資金が投資の対象となります。
特に重要なのが「事業継続資金」の確保です。これは、予期せぬ経済状況の悪化や、突発的な事業上の支出に備えるための資金であり、一般的には3〜6か月分の営業費用が目安とされています。中小企業の場合、売上減少や取引先の倒産など、事業を取り巻くリスクに備え、より慎重に準備しておくことが望ましいでしょう。
この事業継続資金は、流動性の高い普通預金や短期の定期預金などで管理しておくことをおすすめします。そして、この資金を確保した上で、さらに余裕がある資金をインデックスファンドなどの投資に回すという順序が適切です。
STEP3:バランスの取れたポートフォリオを構築する
複数のインデックスファンドを組み合わせることで、より分散されたポートフォリオを構築することが可能です。例えば、国内株式と先進国株式のインデックスファンドを組み合わせる、あるいは株式と債券のインデックスファンドを組み合わせるなどが考えられます。
一般的なポートフォリオの例を以下に示します。
| リスク許容度 | 国内株式 | 先進国株式 | 債券 |
|---|---|---|---|
| 保守的 | 20% | 20% | 60% |
| 中立的 | 30% | 30% | 40% |
| 積極的 | 40% | 40% | 20% |
ただし、これはあくまで一例であり、企業の状況や投資目的に応じて柔軟に調整する必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、最適なポートフォリオを構築することをおすすめします。
STEP4:定期的なリバランスで資産配分を維持する
経済状況や市場環境、企業の財務状況の変化に合わせて、定期的にポートフォリオを見直すことが重要です。定期的なリバランスが重要な理由は、主に以下の2点です。
当初の資産配分を維持することで長期的なリターンの安定化を図る
インデックスファンドは、市場の動きに合わせて構成比率が変動します。たとえば、株式市場が好調な場合、ポートフォリオに占める株式の割合が当初の計画よりも大きくなる可能性があります。そのまま放置すると、リスクを取りすぎた状態になりかねません。
定期的にリバランス(相対的に価値が高くなった資産を一部売却し、価値が低くなった資産を買い増す)を行うことで、当初設定したリスク許容度に基づいた資産配分に戻し、リスクをコントロールします。これは、高値で売り、安値で買うという投資の基本に沿った行動であり、長期的なリターンの安定化に繋がります。
ただし、短期的な市場の変動に過敏に反応する必要はありません。年に一度など、予め決めた頻度で、冷静にポートフォリオの状況を確認し、必要に応じてリバランスを行うことが、中小企業の安定的な資産運用には不可欠といえるでしょう。
内部留保を活かす積立投資という賢明な選択
段階的な投資で市場変動リスクを抑制
内部留保が潤沢な企業においても、インデックスファンドを積立で買い付ける方法は非常に有効です。適切な投資タイミングを見極めるのは困難で、多額の資金を一度に投資すると、その後の市場下落によって大きな損失を被る可能性があります。
積立投資は、投資のタイミングを分散させることによって購入単価を平準化する効果が見込めますので、効率的な資金活用が可能となるでしょう。この手法は「ドルコスト平均法」とも呼ばれ、市場が高値の時には少なく、安値の時には多く購入することで、平均購入単価を下げる効果があります。
例えば、3,000万円の余剰資金がある場合、一度に全額を投資するのではなく、毎月100万円ずつ30か月に分けて投資することで、市場の変動リスクを大幅に軽減できます。この方法であれば、投資開始直後に市場が暴落したとしても、その後の投資分は安値で購入できるため、全体としての損失を抑えることができます。
法人口座で投資を行う税務上のメリット
法人口座で投資を行うことには、個人口座にはない税務上のメリットがあります。
メリット1:本業の利益と相殺が可能
投資で損失が発生した場合、その損失を損金として計上することで、法人税の課税対象となる利益を圧縮することができます。これにより、実質的な税負担を軽減することが可能です。
メリット2:青色欠損金の繰り越しが可能
投資によって生じた損失(青色欠損金)は、翌年以降最大10年間繰り越して将来の利益と相殺することができます。これにより、一時的な損失が出た場合でも、長期的には税負担を軽減できる可能性があります。
ただし、これらの税務メリットを享受するためには、適切な会計処理と税務申告が必要です。税理士などの専門家と相談しながら、適切に運用することをおすすめします。
【編集部コメント】
中小企業における資産運用は、本業を圧迫しない範囲で慎重に行うことが大前提です。インデックスファンドは、専門知識や管理体制が不足しがちな中小企業にとって、最も現実的な選択肢の一つといえるでしょう。ただし、投資はあくまで自己責任です。必ず事業継続資金を確保した上で、余剰資金の範囲内で始めることをおすすめします。また、定期的なリバランスのタイミングや具体的な商品選択については、IFAなどの専門家に相談することで、より適切な運用が可能となります。貴社の持続的な成長のために、インデックスファンドという選択肢を検討されてはいかがでしょうか。





